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芸術と経済の問題にフォーカスした収蔵展「マネー・トーク」キーマン-窪田研二さんに『芸術とは何か?』を尋ねる!

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購入価格を公開するのは広島市現代美術館でも全国の美術館でも類まれな企画。素人も、プロも100万円と1億円の作品価値を具体的に語る人は少ない、むしろ誰も語ろうとしない。それは、芸術作品の価値を「購入価格」で語ることが何となく世間一般でタブー視されているからではないか。「マネー・トーク」を仕掛けたフリー・キュレーターの窪田研二さんは、あえてこの「購入価格」を加えた「新しい」展示を企画した。「購入価格は、新しい情報の1つでしかない」というのが窪田さんの考えだ。

■芸術とは「必需品です」-by窪田研二

 前々からアートに関心があったという窪田さん。大学は商学部を卒業してから銀行に就職。働きながら「本当に自分は何をしたいのだろう」と考えるようになり、27歳で転職を決意した。バックグラウンドがないにも関わらず上野の森美術館に採用され、その後、水戸芸術館現代美術センターからヘッドハンティングを受ける。約6年間の同館勤務を経て、現在フリーのキュレーターとして活躍する。窪田さんに「芸術とは何か?」という問いを投げかけると、「必需品です」と即答する。

■「芸術」を考えるきっかけ

 「芸術とは何か?」という問いに何人の人が即座に明確な回答を出しえるだろうか。それは十人十色の感じ方があって答えがある。その「何か?」を考えるきっかけづくりに窪田さんが挑んだのが今回の企画。同展では、作品と一緒に著名人らのコメントが無造作に床や壁などに散りばめられている。「物にもとづきながら、その物を外れたところに価値をつくることで、芸術とお札はそっくりなのだ。赤瀬川原平」など、その数は約60種類にも及ぶ。それは紛れもなく「芸術」に対する人の意見である。

 「芸術的価値」と「経済的価値」がイコールなのかという問いは、つまり芸術と経済の問題でもある。「芸術の『脱神話化』や商品化をあからさまに宣言することではなく、広島市民を中心とする鑑賞者1人1人が『作品』『購入価格』『意見』をツールとして多角的に芸術を考えるきっかけになることを願う」と窪田さん。

■これからの美術館の役割

 広島市現代美術館の収蔵作品購入予算は、1985年~1994年=毎年1億円~7億円、1995年~2000年=5,000万円前後(1997年=1億)、2001年からは購入予算ゼロの状態が続いている。

 窪田さんは「地方都市に美術館があることは、よりクオリティーの高い作品を身近に感じられること。市民は、芸術や美術館に対してもっと敷居を低くし、広島現美の現状を知ってもらえるといい。今後の美術館の役割としては、時代の流れを理解しながら地域と関わる柔軟な姿勢が求められる。市民とアーティストをつなぐソフト集団としての活動が必要となるだろう」と話す。

■取材を終えて

 収蔵作品を利用し、前例のない展示方法で新たな切り口を見出した企画は斬新だ。決して派手な企画ではないが窪田さんの発する言葉、手がけた文字1つ1つにテーマに対するこだわりがある。

 開催時間は10時・17時。入場料は、一般=360円、大学生=270円、小中高生=170円。月曜休館。2008年1月29日まで(12月29日~1月3日は休館)。

関連記事(広島経済新聞-収蔵作品を「購入価格」とともに展示-現代美術館で新たな試み)

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