「夜のストリートギャラリー」として広島・流川周辺で24時間展示するショーウインドー形式のギャラリー「新地ギャラリー」(広島市中区堀川町)で6月28日、原子爆弾の被害や放射能汚染をテーマにしたインスタレーション展「WEATHERING OF MEMORY/記憶の風化」が始まった。
広島市出身のヒサエ・イエールさんが核問題を題材とした作品を展示する同展は、繁華街の3カ所に点在する「新地ギャラリー」で同時開催するもの。場所ごとにテーマを設けて、イエールさんがこれまで学んだ原子爆弾や目に見えない放射能汚染の被害などを「アートというツール」で表現する。
会場の一つ「新地ギャラリー1」では、材質の異なる2枚の布を使った作品を展示。爆発する核爆弾と内部被爆による人体への影響を表現する。このほか、世界で初めて核実験が行われたアメリカのトリニティー核実験場と広島の街を撮影した2枚の写真を組み合わせた「テクノロジーと破壊の力を表明した」展示も。
イエールさんは、日本の美術大学卒業後、東京都内の高校で教諭として7年間勤務。アメリカ人男性と結婚し、2007年に渡米。語学を勉強し、再び美術大学に通っている。大学では版画を専攻していたが、核問題をテーマにした作品制作に取り組み出した。「環境の変化が大きい」とイエールさん。世界から見たヒロシマを肌で感じ、「意外と原爆のことを知らなかった」とも。
核問題を勉強するうちに、目に見えない放射線被害の影響に注目。身近でもなかなか気付くことができない問題と街の中に溶け込む同ギャラリーがリンクして同所での開催を決めた。広島での個展は初。
目に見えない影響を疑問視したことから始まった作品は、「日本を出たからこそつくれた」とイエールさん。「歴史の一部として学ぶのではなく、原爆の投下によって世界でどんなことが起きているのか考えたい」とアートを通して提案していく。
開催は7月9日まで。