広島で映画館4館を運営する序破急(広島市中区大手町5)は9月2日、福屋八丁堀本店(胡町)に今秋オープンする映画館の概要を発表した。
新しい映画館の場所は福屋八丁堀本店8階で、2008年7月に閉館した「松竹東洋座」「広島名画座」跡。会見には、序破急の蔵本順子社長、映画館のアドバイザーとして参加する広島市出身の美術監督・部谷(へや)京子さん、福屋の大下洋嗣社長が出席。館名や新館の概要について発表した。
館名は公募から選んだ「八丁座」。和モダンを基調にした「映画の(撮影)現場の息吹が感じられる劇場」(部谷さん)は、蔵本社長が好きな時代劇からヒントを得て企画。ロビーは「江戸時代の芝居小屋」をイメージし、館内の一部には映画のセットも使う。
松竹東洋座は「壱」、広島名画座は「弐」としてそれぞれリニューアル。席数は、壱=約155席、弐=60席。座席は広島の家具製作会社マルニ木工(佐伯区湯来町)が同社で初めてとなる劇場用のいすを製作。大きさは畳約半畳分。1脚ずつ手作りしており、スクリーンとの角度、距離感がすべての座席で異なる。音響システムはドルビーデジタルEX7.1チャンネルを採用し、「壱」では3D上映にも対応する。
同劇場には、広島発祥で飲食店経営を手がけるジェリーフィッシュドット(東京都渋谷区)がカフェも出店。劇場オリジナルメニューを提供するほか、序破急が運営する従来の劇場と同様に飲食物の持ち込みは可能。座席も全席自由で「自由なスタイルで映画を楽しんでほしい」とシネコンとは真逆のシステムを導入する。
広島の劇場、出身の美術監督、地場の百貨店、企業がかかわる八丁座。「『広島力』で映画館を作りたい」と蔵本社長。シネコンの台頭によって、来館者が郊外に分散化することから、映画館を広島市中心部の八丁堀に復活させることで「街中を元気にしたい」とも。東洋座、名画座の閉館以降、「跡地活用に関して熟慮を重ねた」大下社長は「街のにぎわいの起爆剤にしたい」と話した。
蔵本社長は「零細企業にも心意気だけはあることを知っていただきたい」とし、街中から劇場が消える逆境の中、十数年企画や構想を温めてきた新館のオープンに着手。総工費は「一般的に1館1億円と言われる」と話し、約2億円であることを示唆する。
オープンは11月下旬を予定。