5月7日にクランクインしたNHK広島放送局開局80周年ドラマ「帽子」の広島ロケが5月13日・20日・21日の3日間、広島市内で行われた。
ドラマの主な舞台は、呉市。古ぼけた店を営む帽子つくりの老職人・春平と、その家を受け持つ警備員の若者・吾朗。老職人の仕事は減り、最近もの忘れも激しくなった。一方、若者は仕事での失敗が続く。自信を失いかけている2人は、ある「胎内被爆者」の女性・世津と、お互いが深い関わりをもっていることを知る。老職人にとっては、兄妹のように育った初恋の人。若者にとっては、自分を捨てた母親。その女性が末期がんと知り、2人は東京に向かう。
広島市内のロケでは、平和記念公園や広島駅などで撮影を行い、広島フィルムコミッションが配信するメールマガジンで募集したエキストラ約50人と緒形拳さんや玉山鉄二さん、岸部一徳さんらが参加した。今後は東京駅や渋谷でロケを行うという。
脚本は、呉市出身の池端俊策さんが担当。長年温めていた題材をこのドラマのために書き下ろし作品化した。軍帽を戦前から作っている帽子屋の主人が池端さんの高校の同級生だったことが作品の背景にある。「生きる誇り」を取り戻すというテーマに対し「核」や「平和」を前に出していない。制作統括の湯澤克彦番組制作担当部長は「被爆前後を描くドラマが多いが、現在の視点で書くこと見えてくるものがあるのではないか」とヒロシマへの新しい切り口を話した。
主人公の実年齢に近い、主演の緒形さんは「ドキュメンタリーを撮るように撮ってもらえれば」とコメント。玉山さんとのかけあいも自然で、撮影中は2人のアイデアで演技が変わってくることもあると湯澤番組制作担当部長。
同作品では、ドラマのキーワードとなる「帽子」をテーマにPRポスターをつくる「ひろしま帽子顔プロジェクト」を同時に行う。募集テーマは、帽子をかぶったお気に入りの顔写真。県外からの募集も受け付け、応募写真でメーンキャストの緒形拳さん、田中裕子さん、玉山鉄二さんの顔をそれぞれモザイクアートで描く。1枚のモザイクアートを作成するには約4,000枚の写真を要し、写真の採用者にはB2版のモザイクアートポスターをプレゼントする。「3枚同時のモザイクアートの募集は珍しい」とNHK広島広報担当者。ポスタープレゼントの試みも視聴者と一緒に番組を作成し、とりわけ地元の活性化につながればと話す。