岡本太郎さんが制作した縦5.5メートル、幅30メートルに及ぶ巨大壁画作品「明日の神話」の設置場所をめぐり、約2年半以上にわたり誘致活動を行ってきた広島。
今年1月9日には、岡本太郎記念現代芸術振興財団の平野暁臣さん(岡本太郎記念館・館長)が同壁画の設置場所選考のため現地調査に訪れ、来春には設置場所が決定するという同壁画について、広島市民の期待は高まりつつある。
「明日の神話」は1960年代末にメキシコの地で描かれ長年にわたり行方不明となっていたが、2003年(約35年ぶり)に発見され日本へ戻され修復された。「原子爆弾が炸裂する瞬間を描きながらもその惨劇から立ち上がろうとする人間」をテーマに描かれたもので副題には「ヒロシマ・ナガサキ」とネーミングされている。
2006年7月、前身の「広島準備委員会」として発足した現「岡本太郎『明日の神話』広島誘致会」は、同年7月26日、東京・汐留で初公開された同壁画の前で広島への誘致をアピールする「東京アクション」を実施。続く10月27日には実物大巨大パネルを市民で完成させるイベント「10.27市民ACT@市民球場」を開催し、12月正式に活動を開始した。
その後、2007年3月には平野館長と面談。週末には広島パルコ前で同会のメンバーらが署名活動を行い、「テレビで見たことがあります、がんばってください」と自ら足を止め署名する人や、「どんな壁画ですか」など説明を求める声もあり、市民の反応はさまざまだった。
同年5月には、広島最大のフェス「フラワーフェスティバル」にブースを出し署名などのPR活動を実施。8月4日の中国新聞朝刊に「意見広告」を提示した翌5日には、原爆ドーム沿いの元安川水面に同壁画を「投影」した様子を各メディアが取り上げた。誘致会では同6日までに3万人以上の署名を集め、11月には壁画設置予定地に「ハノーバー庭園」(中区基町)を提示。今年の1月9日には平野館長が同所の視察を行った。
広島市民球場南側の広島誘致会が設置したパネルの前で、広島市民の声を聞いた。「もちろん広島にほしい」と即答したのは写真や絵を描くことが好きだという高校生の男子(18)。「本来この壁画はどこにあってもいいとは思うが、広島に置かれることで他県の人たちの『原爆』への理解がさらに深まるのでは」(同)。広島で事務員として働く女性(33)は、広島への設置が決まった場合の効果について、「芸術作品からは『平和』という意味を感じる。芸術(同壁画)の力を借りることで広島の今後に役立つはず」とはっきりとした口調で話した。
「壁画の設置には賛成だが、管理できるのだろうか」(52歳、女性)という心配の声も含め、「壁画のモチーフはよく目にする。広島にあったらいいなとは思う」(10代~20代)、「平和のことを考える機会になるのでは」(30代~50代)など、世代別に具体的な賛成理由も寄せられた。
岡本太郎記念現代芸術振興財団は今春にも、壁画の設置場所を広島県広島市、東京都渋谷区、大阪府吹田市のいずれかに決定する。