広島でアートを学んだ学生たちが「卒業後も制作を続けよう」と5月16日、マツダスタジアムそばに共同アトリエ「Kaniya Fine Arts」(広島市南区西蟹屋3)を開いた。
大学卒業後、芸術活動を続けたくても制作スペースがないことから、自らの手で開いた共同アトリエは石を扱う工場跡。内装はそのままで、スペースを人数で区切って使用している。同じ大学や展示会で知り合ったというメンバーの多くは、中学校や専門学校で働く傍ら、絵画や彫刻などそれぞれの制作を行っている。メンバーは8人。
まとめ役は学生時代に彫刻を先行していた山田哲平さん。制作は個人で行っている人が多いが、それでは費用の面からも場所の確保が難しいため、同じように制作スペースを探している人を募った。山田さんと同じく彫刻を手がける浅野元士さんは、制作する際に「ちりやほこり、音が出ることや作品を出し入れしやすい広いスペースが必要だった」。同所は、新広島市民球場「マツダZoom-Zoomスタジアム広島」に近いことから、試合がある日は球場から歓声も聞こえてくるという。
16日には、「ここでどんなことをしているのか分かるように」と、これまでメンバーが制作してきた作品を工場内にディスプレーし、近隣住民らを招いて展示会も開いた。来場者は約50人。広島のギャラリー関係者らも来場し、興味を示したという。
「広島では大学卒業後にアトリエなど制作スペースを持つ人がまだ少ない」と浅野さん。自身も含め、メンバーの半数は県外の出身者だが、広島の穏やかな瀬戸内海式気候や土地柄が気に入り、「広島で制作していきたい」と話す。手探りで始めた共同アトリエには、まだスペースに余裕があることからメンバーを増やすことも検討している。