2014年に閉館した広島・福山の老舗映画館が舞台の映画「シネマの天使」が1月22日、横川シネマ(広島市西区横川町3)で始まる。広島市内でのアンコール上映は今回で3回目。
実在した映画館が舞台の同作は122年続いた「シネフク大黒座」で撮影した。取り壊しが決まった同館の姿を映像で残したいと劇場関係者が広島市在住の映画監督・時川英之さんに依頼した。
時川さんによると、当初は映画ではなく、映像を撮ろうと思ったが、スタッフをはじめとする地域住民の思いに応えようと映画化を決めたという。
時川さんは脚本と編集も担当。劇場スタッフに話を聞き、観客が感想を書き込むノートも参考にしながら、実際に起こったエピソードや会話もストーリーに盛り込む。「劇場が持つ独特な雰囲気を残したかった」と話す。作中に出てくる閉館セレモニーや工事は実際の映像を使い、館内壁面に観客が書き残した手書きメッセージも実物を撮影した。
「作品に好き嫌いはあれど、映画館の閉館に対して自分の感情や思い出を呼び起こされるのでは」と時川さん。作品の感想も個人の思い出と結び付けられたものが多いという。
広島では全国公開に先駆けて昨年10月から八丁座(中区胡町)で上映を始め、立ち見客が出る盛況ぶりを見せた。前売り券の販売も好調で、イオンシネマ広島(南区段原南1)に劇場を変えて2回目の上映を行った。横川シネマではSNSなどでの反響も受けて2週間の限定上映が決まった。
シネフク大黒座は1892年に芝居小屋として開設。少しずつ映画館として営業するようになり、最盛期の1960年代には40万人を動員したという。
横川シネマのほか、福山エーガル8シネマズ、シネマ尾道でも上映する。