古代のつぼをモチーフにした数百個の「小さなつぼ」を集めた作陶展が8月16日、広島・平和大通りのアートスペース「HAP(ハップ)」(広島市中区鶴見町、TEL 082-249-5453)で始まった。
会場いっぱいに展示する手のひらサイズの小さなつぼは陶芸家・銭本眞理さんが制作。銭本さんは大学卒業後、食品会社に就職。営業を経て、備前窯場の助手を経験した後、管理栄養士として勤務するが、「小さいころから好きだった」という陶芸の道へ進んだ。
福井県あわら市陶彩窯の大森正人氏に師事した4年後の2008年、岡山県に青馬窯(せいばがま)を築窯。これまで、前掛け作家の坂田まゆみさんとのユニット展示を中心に展覧会を開いてきた。
小さなつぼは、坂田さんに同行して織物を見に行ったラオスで見かけた「水がめ」のフォルムに引かれたことをきっかけに作り始めた。「ラオスでは高温焼成の技術が用いられず、日本で弥生時代から続く焼成方法で制作されているらしい」と銭本さん。訪れた村の軒下や玄関先にあるつぼは、「生活に基づいた美」とも。
制作したのはサイズが、10分の1以下の小さなつぼ500個。会場には420個しか入らなかったが、民族学博物館を訪れ、弥生時代やアフリカなど原始的な造形を書き写して一つひとつを手作りした。使用した土は6~7種類。床との設置面は削って、先を尖らせるようにアレンジを加えた。
「フォルムと土色の違いを見てもらえたら」と釉薬(ゆうやく)はほとんど使わなかった。銭本さんは、「同じものは一つもない。じっくり見ていただければうれしい」と笑顔を見せる。
開催時間は11時~19時(最終日は17時まで)。無料。今月21日まで。