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広島・竹原の石風呂で「大将の話」聞く会 「石風呂」文化と歴史の継承目的に

竹原・忠海で岩乃屋が経営する石風呂

竹原・忠海で岩乃屋が経営する石風呂

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 今年9月に営業を終える広島・竹原の石風呂を経営する岩乃屋(竹原市忠海床浦1)で2月20日、2代目・稲村喬司さん(74)の話を聞く座談会が開かれた。

「あつい方」「ぬるい方」2種類の石風呂

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 主催は空き家になっている元商店「吉田屋」を活用し、訪れた観光客や地元住民に向け、もてなしの空間創出に取り組む忠海、吉田屋プロジェクト。石風呂文化や歴史の継承を目的に、これまで1人で営業を続けてきた稲村さんの話を聞き、感じたことを参加者がそれぞれ発信していこうと企画した。

 当日は地域振興や町おこしに興味関心がある男女9人が県内外から参加。話を聞く前に全員で石風呂を体験し、岩乃屋に会場を移して、「ざっくばらんに始めたい」とあいさつもほどほどに稲村さんが話す石風呂の歴史に耳を傾けた。

 石風呂はかつて瀬戸内海を中心に約200カ所あったという風呂文化で、湯治客をもてなすために広まったのではないかとされている。同所は戦争遺跡を補修し、稲村さんが8歳の時に営業を始めた。

 室内は男女の着替え室と休憩スペース、「あつい方」「ぬるい方」と書かれた2カ所の風呂があり、男女混浴のため、水着などを着て利用する。「あつい方」「ぬるい方」は一つの洞窟で、レンガを積んで空間を仕切る。毎朝、15~20束を使って「あつい方」で火を付け、壁の間に通した土管から出る煙で「ぬるい方」の温度を上げる。稲村さんは、「瞬間的にきつい仕事は火をたくとき。全ての作業が体力作り」と話す。束木や忠海の石風呂で昔から使ってきたという天然のアマモ、むしろ集めから営業準備まで、1人で続けるために知恵を絞り、工夫を凝らしながら仕組みを作ってきた。

 稲村さんは50歳で心筋梗塞を患うまで一切、休みなく営業を続けてきたという。復帰後から不定休営業に切り替えたが、「休みには休みの仕事がある」と石風呂に通う。稲村さんにとって、「石風呂を気にしない日は1日もない」毎日の中で1番うれしいことは、帰り際、岩乃屋に顔をのぞかせて「ありがとう」と声を掛けて帰る利用客の言葉という。

 10年前に「75歳定年」を決めたという稲村さん。定年を設けた理由は、「束木が手に入らないため」。こだわってきた材料が時代的に手に入りにくい背景があるという。利用客は現在、週末を中心に1日平均15人前後が足を運んでいる。

 営業時間は11時~21時。「あつい方」は13時から。毎週月曜、第3日曜定休。料金は1,200円(16時からは1,100円)。最終営業日は75歳を迎える前日の9月1日。

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